むさし100km徒歩の旅とは

1. 事業背景
現社会の中で私達は様々な問題を抱えています。その中でも特に青少年教育の問題は避けて通れない分野の一つです。教育に関する議論の中でしばしば指摘されることは子ども達の体験不足であり、「生きる力」が欠乏しているということです。今の子どもたちは勉強中心の生活になっているように思います。しかし勉強だけで「生きる力」が身につくとは思えません。もちろん勉強も大事ですが、ボランティア、スポーツ、地域、大自然の中等の活動も積極的に体験していく事も大切な事ではないでしょうか。体験が一つでも多いほど「生きる力」は身についていくと考えます。

そこで、「むさし 100 km徒歩の旅」という体験学習を通じて子どもたちの「生きる力」を醸成し、健全に、強く逞しい立派な子どもになるきっかけとしたいのです。また郷土愛を育み、学校・家庭・地域・行政などの連携強化により地域コミュニティーを活性化し、地域の教育力向上の一助としたいと考えております。加えて、取り巻く大人たちが責任を持って、青少年の生きる力や道徳感の必要性を十分理解して育成していかなければならないと思います。善悪の判断はもちろん、生活習慣や他人を思いやる心、地域社会とのかかわり方など、保護者だけではなく地域人全員が導いていくことが大切だと考えます。

どうぞご理解の上、皆様のご参加お待ち申し上げております。

 

2. 事業手法
小学生100名の参加を募り、1班10名に(知人・友人関係を排除した)班編成し4泊5日寝食を共にしながら100kmを歩き抜く事業です。宿泊は、地域の学校体育館等を提供していただき宿泊施設として利用します。道中サポートするスタッフは、近隣地域より学生を中心にボランティアスタッフを60名募り、当会員と共に班付指導員・安全確保・荷物輸送・食事等役割分担し子どもたちをサポートします。またボランティアスタッフは、事前研修会を行い、事業に必要な知識やスキルを身につけ当日に備えます。コースは、生活圏内の自然や名所を巡り新たな地域の魅力を発見できるように設定します。また、事前に保護者参加者研修会・説明会、事業終了後は報告会を行い、この事業の趣旨目的への理解を深めていただきます。

 

3. 生きる力とは?
現代の子どもたちは体験不足であり、「生きる力」が欠乏していると言われます。

「生きる力」には学力や体力など様々なものがありますが、自らが問題を見つけそれに主体的に取り組み解決していく力、すなわち「問題解決能力」や自らを律しつつ他人と協調し、他人を思いやる心や物事に感動する心などの「豊かな人間性」なども含まれると思います。
4. 大人たちへの想い
近年大人たちを取り巻く環境はめまぐるしく変化しており、対応を迫られる我々は自分のことで精一杯なのが実情です。しかし大人は、未来に何かしら残していかなければならない使命を背負っているはずです。自分が変わらない限り未来は変わってくれません。この事業を通して子どもたちは精一杯生きる力を身に付けようとします。この素晴らしい事業を、他人事のように見ているだけではいけないのではないでしょうか。前に進もうとしている子どもたちを、地域の大人として出来る限りの声援と協力をすることによって、大人の存在感や威厳みたいなものが保たれるのではないでしょうか。

 

5. なぜ100km?
「生きる力」の中には、学校教育や家庭教育の中では育むことが困難なものもあります。地域社会の中で大人たちや異なる年齢の友人たちと交流し、様々な生活体験・社会体験・自然体験を豊富に積み重ねることが大切だと思います。生まれたときから平和で、豊かで何不自由なく生活でき、努力しなくても辛抱しなくても物が手に入る時代です。社会が平和で豊かになったのはもちろん素晴らしいことですが、そのかたわら何もかもそろって至れり尽せりでなければ生きていけないひ弱な子どもたちが育っているのも事実です。「生きる力」は教える事ができません。自分で体験し自分で学び取らなければ「生きる力」にはつながりません。「歩く」といくのは生きるうえでの最も基本的な動作の一つです。「歩く」、すなわち「前進する」ことは自分との戦いであり、自分との葛藤でもあります。このような経験を今の子どもたちはしたことがないゆえに、ひ弱さが目立つのではないでしょうか。「むさし 100 km徒歩の旅」を通じて、現代社会の中で少なくなってきた「歩く」という基本的動作を、しかも普段は体験できない 100 kmの長い道のりを、我慢をしながら自分の力で完歩する事により、多くの子どもたちに「生きる力」を身に付けていただきたいと思います。

 

6. なぜ4泊5日?
1泊~ 2 泊の事業は修学旅行などですでに実施されていますし、家庭教育でも実施可能です。通常の学校教育や家庭教育では実施が困難で、現在の教育を補完するためのプログラムが地域社会に求められています。実際、 1 泊や 2 泊では育みがたいもの、 4 泊 5 日して初めて子どもたちの中に宿るものがあると思います。人間のふれあいというものはそう簡単には生まれてきません。子どもとはいえ 1 日目~ 2 日目はまだまだ自分の本性をさらけ出しません。しかし、 1 日目~ 2 日目はどうにか歩いた子どもたちも、 3 日目~ 4 日目になると肉体的・精神的な疲労がピークに達し、ホームシックにかかり、思い悩みます。その中で初めて、忍耐や真の心のふれあいが生じます。長期間寝食を共にすることにより人と人との垣根が取り払われ、信頼・尊敬・助け合いの心・規律・世代間交流・地域との交流などが生まれ、集団生活が確立される等々の効果が表れます。この壁を自力で乗り越えさせることが自信につながり、物事を成し遂げたときの何事にも代えがたい喜びにつながり、「生きる力」を育むことにつながると思います。これが本事業の最大の目的であり、そのためには 4 泊 5 日の過程が必要になります。

 

7. 徒歩の旅?
「かわいい子には旅をさせよ」ということわざがあります。これは、子どもがかわいければ、甘やかし育てるよりも苦しい体験をさせて人生の辛苦をなめさせた方がよい、という意味です。現在の家庭において、むしろ過保護・過干渉・過許可などが多く見受けられ、独り立ちさせるために子どもを旅に出すという考え方は失われつつあるように感じられます。人生の中には楽しいこと・うれしいこと・面白いこともありますが、それ以上、苦しい事・痛いこと・辛いこと・悲しいこと・悔しいことなどがたくさんあるでしょうし、それらの体験を乗り越えたときにこそ真の感動や幸福がもたらせられるのではないでしょうか。「生きる力」はそれら全てを含んだ体験を通じて初めて得られるものだと考えます。子どもたちが「生きる力」を育むために人生初めての「旅」に出ることはとても有意義なことではないかと考え、このような事業を企画いたしました。

 

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